University of Minnesota Human Rights Center


女性に対する暴力の撤廃に関する宣言、 国連総会決議 48/104、 一九九三年一二月

 総会は、

 すべての人間の平等、安全、自由、保全および尊厳に関する権利および原則の女性に対する普遍的適用の緊急な必要性を認識し、

 これらの権利および原則が世界人権宣言、市民的および政治的権利に関する国際人権規約、経済的、社会的および文化的権利に関する国際人権規約、女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約、および拷問その他の残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取り扱いまたは刑罰を禁止する条約を含む国際文書に掲げられていることに留意し、

 女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約の実効的な履行が女性に対する暴力の撤廃に貢献するであろうことおよびこの決議に定める女性に対する暴力の撤廃に関する宣言がこの過程を補強することを承認し、

 女性に対する暴力が、女性に対する暴力を根絶するために一連の措置を勧告した女性の地位向上のためのナイロビ将来戦略で認められているように、平等、発展および平和の達成にとって、および、女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約の完全な履行にとって障害であることを憂慮し、

 女性に対する暴力が人権および基本的自由の女性による享受を侵害し、害しまたは無効にすることを確認し、および、女性に対する暴力に関してこれらの権利および自由を保護し促進することが長年にわたりなされてこなかったことを憂慮し、

 女性に対する暴力は、男性が女性を支配および差別し、女性の完全な発展を妨げる結果となった男女間の不平等な力関係を歴史的に明らかに示すものであること、および、女性に対する暴力は、女性が男性に比べて従属的地位に置かされることを余儀なくさせる重大な社会的構造の一つであることを承認し、

 少数者グループに属する女性、先住民の女性、難民の女性、移民女性、農村または遠隔地域に住む女性、貧困な女性、施設または拘禁中の女性、女児、障害を有する女性、老齢女性および武力紛争下にいる女性など、いくつかの女性の集団が特に暴力を受けやすいことを憂慮し、

 家庭および社会における女性に対する暴力は、収入、階級および文化の境界を越えて蔓延しており、従って、その発生を除去するために緊急かつ効果的な手段によってこれと対抗しなくてはならないことを、その付属書類で承認した1990年5月24日の経済社会理事会決議1990/15を想起し、

 経済社会理事会が女性に対する暴力の問題を明示に扱う国際文書の枠組みの発展を勧告した1991年5月30日の経済社会理事会決議1991/18をさらに想起し、

 女性運動が女性に対する暴力の問題の性質、深刻性および重要性に対する注意をますます喚起させることに果たした役割を歓迎し、

 社会における法的、社会的、政治的および経済的平等を達成する女性の機会が、とりわけ継続的かつ特有の暴力によって制限されていることに警戒し、

 上記に鑑み、女性に対する暴力の明白かつ包括的な定義、あらゆる形態の女性に対する暴力の撤廃を確保するために適用されるべき諸権利の明白な表明、国家責任に関する国家による公約、および、女性に対する暴力の撤廃に向けた国際社会全般による公約が必要であることを確信し、

 女性に対する暴力の撤廃に関する宣言を次のとおり厳粛に公布し、この宣言が一般に知られ尊重されるようになるためにあらゆる努力がなされることを強く勧告する。

第一条

 この宣言の適用上、「女性に対する暴力」とは、性に基づく暴力行為であって、公的生活で起こるか私的生活で起こるかを問わず、女性に対する身体的、性的若しくは心理的危害または苦痛(かかる行為の威嚇を含む)、強制または恣意的な自由の剥奪となる、または、なるおそれのあるものをいう。

第二条

 女性に対する暴力は、以下のものを含む(ただし、これに限定されない)と理解される。

 (a) 家庭において発生する身体的、性的および心理的暴力であって、殴打、世帯内での女児に対する性的虐待、持参金に関連する暴力、夫婦間における強姦、女性の生殖器切断およびその他の女性に有害な伝統的慣行、非夫婦間の暴力および搾取に関連する暴力を含む。

 (b) 一般社会において発生する身体的、性的および心理的暴力であって、職場、教育施設およびその他の場所における強姦、性的虐待、セクシュアル・ハラスメントおよび脅迫、女性の売買および強制売春を含む。

 (c) どこで発生したかを問わず、国家によって行なわれるまたは許される身体的、性的および心理的暴力。

第三条

 女性は、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的その他のいかなる分野においても、すべての人権および基本的自由の平等な享受と保護を受ける権利を有する。これらの権利は、とりわけ、以下のものを含む。

 (a) 生命に対する権利

 (b) 平等に対する権利

 (c) 身体の自由と安全に対する権利

 (d) 法の下の平等な保護に対する権利

 (e) あらゆる形態の差別から自由である権利

 (f) 到達可能な最高水準の身体的および精神的健康に対する権利

 (g) 公正かつ良好な労働条件に対する権利

 (h) 拷問またはその他の残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱いまたは刑罰を受けない権利

第四条

 国家は、女性に対する暴力を非難すべきであり、その撤廃に関する義務を回避するために、いかなる慣習、伝統または宗教的考慮をも援用するべきではない。国家は、女性に対する暴力を撤廃する政策をすべての適切な手段によりかつ遅滞なく追求し、この目的のために、以下のことをするべきである。

 (a) あらゆる形態の女性に対する差別の撤廃に関する条約が未批准である場合は、これを批准またはこれに加入すること、または、この条約に対する留保を撤回することを考慮すること。

 (b) 女性に対する暴力に関与することを控えること。

 (c) これらの行為が国家によってなされるか私人によってなされるかを問わず、女性に対する暴力行為を防止し、調査しおよび国内法に従って処罰するために相当の注意を払うこと。

 (d) 暴力を受けた女性に対して引き起こされる権利侵害を処罰し救済するために、国内立法において刑法上、民法上、労働法上および行政法上の制裁を発展させること。暴力を受けた女性は司法手続きを利用する権利が与えられ、かつ、国内立法によって規定されているように、受けた損害に対する公正かつ実効的な救済を利用する権利が与えられるべきである。国家は、また、かかる手続きを通じて救済を求める権利を女性に知らせるべきである。

 (e) あらゆる形態の暴力に対する女性の保護を促進するために国内行動計画を発展させる可能性を考慮すること、または適当な場合には、非政府間組織、特にこの問題に関心のある非政府間組織によって与えられうる協力を考慮にいれ、既存の計画の中にこのための規定を含ませることを考慮すること。

 (f) あらゆる形態の暴力に対する女性の保護を促進する防止的アプローチおよび法的、行政的および文化的性質のあらゆる措置を包括的に発展させること、および、性に敏感でない法、慣行またはその他の干渉のために女性が再び被害者とならないことを確保すること。

 (g) 利用可能な手段に照らして実行可能な最大の範囲で、必要な場合には、国際協力の枠組みの範囲内で、暴力を受けた女性および適当な場合にはその子どもが、援助体制と同様に、リハビリテーション、育児および子どもの扶養における援助、治療、カウンセリング、保健および社会的サービス、施設およびプログラム等の特別な援助が受けられるように確保するために活動すること。

 (h) 女性に対する暴力の撤廃に関する国家活動のための適当な財源を政府予算の中に含めること。

 (i)法の執行官および女性に対する暴力を防止し、調査しかつ処罰するための政策履行の責任を有する公務員が女性のニーズに敏感になるための訓練を受けることを確保するための措置をとること。

 (j) 男女の社会的および文化的行動パターンを修正し、両性のいずれか一方の劣等性または優越性の観念および男女の定型化された役割を基礎とする偏見、慣習的慣行およびその他の慣行を撤廃するために、特に教育の分野において、すべての適当な措置をとること。

 (k) 女性に対する様々な形態の暴力の蔓延に関する、特に家庭内暴力に関する調査を促進し、資料を収集し、統計を編集すること、および、女性に対する暴力の原因、性質、重大性および結果に関する調査および女性に対する暴力を防止し救済するために実行された措置の有効性に関する調査を奨励すること。これらの統計および調査の成果は公表される。

 (l) 特に暴力を受けやすい女性に対する暴力の撤廃に向けた措置をとること。

 (m) 関連する国連の人権文書の下で要求される報告書の提出に当たっては、女性に対する暴力に関する情報およびこの宣言を履行するためにとられた措置を報告書の中に含めること。

 (n)この宣言に規定された原則の履行を助けるために適切なガイドラインの発展を奨励すること。

 (o) 女性に対する暴力の問題を知らしめかつ問題を多少とも解決することにおいて、世界中の女性運動および非政府間組織の重要な役割を承認すること。

 (p) 女性運動および非政府間組織の仕事に便宜を与えかつ向上させること、および、それらと地方、国内および地域レベルで協力すること。

 (q) 適当な場合には、プログラムの中に女性に対する暴力の撤廃を含ませるように、加盟している政府間の地域組織を奨励すること。

第五条

 国連システムの諸機関および専門機関は、それぞれの権限ある分野の範囲内で、この宣言に規定された権利および原則の承認および実現化に貢献すべきであり、とりわけ、このために以下のことをするべきである。

 (a) 暴力を撲滅するための地域的戦略を定義し、経験を交換しおよび女性に対する暴力の撤廃に関するプログラムに資金を供給するために国際的および地域的協力を育成すること。

 (b) 女性に対する暴力の撤廃の問題がすべての人々の間で認識され意識が高められるために、会合およびセミナーを後援すること。

 (c) この問題と効果的に取り組むために人権条約機構間の国連システム内の協力および交流を育成すること。

 (d) 世界の社会状況についての定期的報告書等の社会的傾向と問題を扱う国連システムの諸機関による分析の中に、女性に対する暴力の傾向についての考察を含ませること。

 (e) 女性に対する暴力の問題、特に、暴力を受けやすい女性の集団に関する問題を、進行中のプログラムに組み入れるために国連システムの諸機関の間の調整を促進すること。

 (f) ここで述べられた措置を考慮し、女性に対する暴力に関するガイドラインまたはマニュアルの作成を促進すること。

 (g) 人権文書の履行に関する任務の遂行において、適当な場合は、女性に対する暴力の撤廃の問題を検討すること。

 (h) 女性に対する暴力に取り組む非政府間組織と協力すること。

第六条

 この宣言のいかなる規定も、一国の法令または一国について効力を有する国際条約または国際文書に含まれうる女性に対する暴力の撤廃に、より貢献するいかなる規定にも影響を及ぼすものではない。


出典 http://myriel.ads.fukushima-u.ac.jp/data/law/bouryoku.html


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