University of Minnesota Human Rights Center


アフガニスタン国際戦犯法廷規程 二〇〇二年一〇月五日起草 二〇〇二年一二月二二日改正


第1条 国際法廷の権限

 国際法廷は、本規程の定めるところに従い、2001年10月1日以後にアフガニスタン領域内において国際人道法の重大な違反を犯した個人を訴追する権 限を持つ。

第2条 侵略の罪

 国際法廷は、侵略の罪を行ったり、人に命じて行わせた者を訴追する権 限を持つ。

第3条 戦争犯罪

 国際法廷は、1949年8月12日のジュネーヴ諸条約の重大な違反を犯した、または人に命じて行わせた個人を訴追する権 限を持つ。すなわち、ジュネーヴ諸条約の条項が保護している人または財産に対する以下の行為であ る。

a) 故意による殺人

b) 生物学的実験を含む拷問または非人道的な取扱い

c) 身体または健康に故意によって深刻な苦痛を引き起こし、または重大な傷害を与えること

d) 軍事的必要性によっては正当化されず、かつ、不法に恣意的に実行された財産の大規模な破壊および徴発

e) 戦争捕虜または民間人を敵対国の軍隊において使役すること

f) 戦争捕虜または民間人が公正かつ正規の裁判を受ける権 利の恣意的な剥奪

g) 不法な強制移住または移送、および民間人の不法な監禁

h) 民間人を人質に取ること

2. 国際法廷は、戦争犯罪の定義を明確にするために、1977年6月8日のジュネーヴ諸条約第一追加議定書を参照することができる。

第4条 人道に対する罪

 国際法廷は、紛争の性質が国際的であ るか国内的であるかに関わらず、武力紛争において民間人に対して広範な攻撃または系統的な攻撃の一環として行われた以下のような犯罪に関して責任を負う個人を訴追する権 限を持つ。

a) 殺人

b) せん滅

c) 奴隷化

d) 強制移送

e) 拘禁

f) 拷問

g) レイプ

h) 政治的、民族的、宗教的理由に基づいた迫害

i) その他の非人道的な行為

第5条 個人に対する裁判権

 国際法廷は、本規程の規定に従って、自然人に対して裁判権 を持つ。

第6条 個人の刑事責任

1. 本規程第2条および第3条に記される犯罪の計画、準備または実行において計画、煽動、命令、実施、または幇助・教唆した個人は、犯罪に対して個人として責任を負う。

2. 被告人の公的立場に関わらず ―たとえ国家や政府の元首や政府高官であ ったとしても― その被告人の犯罪責任と刑罰は軽減されることはない。

3. 本規程第2条および第3条に記された犯罪行為が被告人の部下によって犯されたとしても、被告人が自分の部下がそのような行為を犯すことまたは犯したことを知っていた、または知るべきであ った場合、また被告人がそのような行為を避けるための必要かつ十分な措置を取る、ないしはその行為を犯した個人を罰することを怠った場合は、被告人の刑事責任は軽減されない。

4. 被告人が政府または上官の命令にしたがって罪を犯した場合は、被告人の刑事責任は軽減されないが、国際法廷が必要とみなした場合は刑罰の軽減を考慮することができる。

第7条 領域的裁判権 および時間的裁判権

 国際法廷の領域的裁判権は、地上領域、航空領域および水域を含むアフガニスタン領土に及ぶ。当国際法廷の時間的裁判権 は2001年10月1日以降の時期に及ぶ。

第8条 国際法廷の構成

 国際法廷は、以下の組織によって構成される。

a) 裁判官、

b) 検察官、

c) 事務局―裁判部と検察官の事務を掌る。

第9条 裁判部の構成

1. 裁判部は、三名の独立した裁判官から構成される。

2. 裁判部は、陪審員を指名することができる。

第10条 裁判官の適性

 裁判官は、高い倫理観、公正さと誠実さを有し、各自の国において最高の法的役職に就任するだけの適性を有している者とする。裁判部は刑法と国際人道法や人権 法を含む国際法の分野における経験を有する裁判官から構成される。

第11条 手続き証拠規則

 国際法廷の裁判官は、予審手続き、公判、証拠の許容性、被害者および証人の保護その他の然るべき事項について手続き証拠規則を採択する。

第12条 検察官

1. 検察官は、2001年10月1日以降にアフガニスタン領域内で起こされた国際人道法の重大な違反に関して責任を持つ個人を捜査し訴追する責任を持つ。

2. 検察官は高い倫理観をもち、刑事事件の捜査と訴追の処理に優れた能力と経験をもたなければならない。

3. 検察官は、国際法廷において独立した機関として職務を果たす。彼または彼女はいかなる政府やその他のアクターに指示を仰いだり、またはそれらから指示を受けてはならない。

4. 検察部は、検察官および必要とされる適性を有するその他の職員によって構成される。

第13条 事務局

1. 事務局は、国際法廷の運営および事務処理に関し責任を持つ。

2. 事務局は、事務局長および必要とされる適性を有するその他の職員によって構成される。

第14条 捜査および起訴準備

1. 検察官は、職権上の捜査またはあ らゆる情報源 ―特に政府、国連諸機関、国際機関および非政府組織(NGO)―  から得られた情報に基づいた取り調べを進める。検察官は受け取った情報、あ るいは入手した情報を吟味し、訴訟を起こすための十分な証拠となるかを決定する。

2. 検察官は、証拠を収集し現場検証を行うために、被疑者、被害者および証人に尋問する権 限を有するものとする。

3. 一応十分な証拠ありと判断する場合、本規程に基づいて検察官は、被告人を訴追する事実関係および犯罪に関する簡明な陳述を含む起訴状を作成する。

第15条 被害者及び証人の保護

 国際法廷は、手続き証拠規則の中で被告人と証人の保護を提供する。保護措置は非公開審理や被害者の身元に関する保護を含むが、それらに限定されない。

第16条 判決

1. 裁判部は、国際人道法の重大な違反を犯した個人に関する判決を言い渡すものとする。

2. 判決は裁判部の合意によって決定されるものであ り、公開廷で裁判長によって言い渡される。

第17条 勧告

 裁判部は、国際人道法の重大な違反を犯した者、関連する政府および国際社会に勧告を行う。

第18条 協力および司法協力

1. 非政府組織は、国際人道法の重大な違反を問われている個人の捜査と訴追に関して当国際法廷に協力する。

2. 以下の事項を含むがそれに限定されない事項に関して、非政府組織は裁判部による協力要請または命令に対し遅滞なく従う。

a) 関係者の身元と居場所、

b) 証言をし、証拠を提供すること、

c) 文書の提供。

第19条 国際法廷の所在地

 国際法廷の所在地は、東京とする。

第20条 国際法廷の経費

 国際法廷の経費は、非政府組織が負担するものとする。

第21条 使用言語

 国際法廷における使用言語は、日本語および英語とする。

出典 http://afghan-tribunal.3005.net/japanese/SHIRYO/houtei.htm


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