University of Minnesota Human Rights Center


国際連合要員及び関連職員の安全に関する条約、 G.A. res. 49/59, 49 U.N. GAOR Supp. (No. 49) at 299, U.N. Doc. A/49/49 (1994)


 この条約の締約国は、

 国際連合要員及び関連要員に対する故意の攻撃から生ずる死者及び負傷者の数が増大していることを深く憂慮し、

 国際連合のために行動する要員に対する攻撃その他の不当な取扱いは、行為者のいかんを問わず、正当化し得ず、かつ、容認し難いことに留意し、

 国際連合活動は、国際社会の共通の利益のために国際連合憲章の原則及び目的に従って行われるものであ ることを認識し、

 予防外交、平和創造、平和推持、平和構築及び人道的な活動その他の活動の分野における国際連合の努力に関して国際連合要員及び関連要員が重要な貢献を行っていることを認め、

 国際連合要員及び関連要員の安全を確保するために現在とられている措置、持にそのために国際連合の主要機関によりとられている措置を認識し、

 それにもかかわらず、国際連合要員及び関連要員の保護のために現在とられている措置が十分でないことを認識し、

 国際連合活動の実効性及び安全性は、その活動が受入国の同意及び協力を得て実施される場合に高められることを認め、

 国際連合要員及び関連要員が配置されるすべての国その他これらの要員が支援を求めるすべての者に対し、国際連合活動の実施を容易にし及びその任務を遂行するための包括的な支援を与えるよう訴え、

 国際連合要員及び関連要員に対する攻撃を防止し並びにそのような攻撃を行った者を処罰するための適当かつ効果的な措置を緊急にとる必要があ ることを確信して、

 次のとおり協定した。

第一条 定義
  この条約の適用上、

(a) 「国際連合要員」とは、次の者をいう。

(i) 国際連合事務総長により、国際連合活動の軍事、警察又は文民の部門の構成員として任用され又は配置された者

(ii) 国際連合、その専門機関又は国際原子力機関の職務を行うその他の職員及び専門家であ って、国際連合活動が行われている地域内に公的資格で所在するもの

(b) 「関連要員」とは、次に掲げる者であって、国際連合活動の任務の遂行を支援する活動を行うものをいう。

(i) 国際連合の権限のある機関の同意を得て、政府又は政府間機関によって配属された者

(ii) 国際連合事務総長、専門機関又は高裁原子力機関によって任用された者

(iii) 国際連合事務総長、専門機関又は国際原子力機関との合意に基づいて、人道的な目的を有する非政府機関によって配置された者

(c) 「国際連合活動」とは、国際連合憲章に従い国際連合の権限のある機関によって設けられ、かつ、国際連合の権 限及び管理の下で実施される活動であって、次の(i)又は(ii)に定める条件を満たすものをいう。

(i) 当該活動が国際の平和及び安全の推持又は回復を目的とするものであること。

(ii) この条約の適用のため、安全保障理事会又は国際連合総会が当該活動に参加する要員の安全に対して例外的な危険が存在する旨を宣言したこと。

(d) 「受入国」とは、その領域内で国際連合活動が実施される国をいう。

(e) 「通過国」とは、受入国以外の国であって、国際連合要員及び関連要員又はこれらの要員の装備が国際連合活動に関連してその領域を通過し又はその領域内に一時的に所在するものをいう。

第二条 適用範囲

1 この条約は、前条に定める国際連合要員及び関連要員並びに国際連合活動について適用する。

2 この条約は、国際連合憲章第七章の規定に基づく強制行動として安全保障理事会が認めた国除連合活動であ って、その要員のいずれかが組織された軍隊との交戦に戦闘員として従事し、かつ、国際武力紛争に係る法規が適用されるものについては適用しない。

第三条 識別

1 国際連合活動の軍事及び警察の部門の構成員並びにこれらの構成員に係る車両、船舶及び航空機には、明確な標識を付する。国際連合活動に係るその他の要員、車両、船舶及び航空機は、国際連合事務総長が別段の決定を行わない限り、適切に識別されるようにする。

2 すべての国際連合要員及び関連要員は、適当な身分証明書を携帯する。

第四条 国際連合活動の地位に関する協定
  受入国及び国際連合は、できる限り速やかに、国際連合活動及び当該活動に従事するすべての要員の地位に関する協定(特に当該活動の軍事及び警察の部門の構成員の特権 及び免除に係る規定を含むもの)を締結する。

五条 通過
  通過国は、国際進合要員及び関連要員並びにこれらの要員の装備が受入国に入国し及び受入国から出国する際に妨げられることなく通過することを容易にする。

第六条 法令の尊重

1 国際連合要員及び関連要員は、自己の享有する特権及び免除並びに自己の職務上の義務を害されない限りにおいて、(a)受入国及び通過国の法令を尊重し、並びに(b)自己の職務の中立性及びその国際的な性質に反するいかなる行動又は活動も差し控える。

2 国際連合事務総長は、1のご義務が遵守されろことを確保するための適当なすべての措置をとる。

第七条 国際連合要員及び関連要員の安全を確保する義務

1 国際連合要員及び関連要員並びにこれらの要員の装備及び施設は、攻撃その他これらの要員がその任務を遂行することを妨げる行為の対象とされてはならない。

2 締約国は、国係連合要員及び関連要員の安全を確保するための適当なすべての措置をとる。特に、締約国は、自国の領城内に配置された国際連合要員及び関連要員を第九条に定める犯罪から保護するための適当なすべての措置をとる。

3 締約国は、この条約の実施に当たり、適当と認める場合、特に受入国自身が必要措置をとることができない場合には、国際連合及び他の締約国と協力する。

第八条 捕らえられ又は拘禁された国際連合要員及び関連要員を釈放し又は送還する義務

  適用のある軍隊の地位に関する協定に別段の定めがある場合を除くほか、国際連合要員又は関連要員が自己の職務の執行の過程で補らえられ又は拘禁された場合において、その身分が確認されたときは、尋問されることなく速やかに釈放され、かつ、国際連合その他の適当な当局に送還される。そのような要員は、釈放されるまでの間、普遍的に認められている人権 に関する基準並びに千九百四十九年のジュネーウ諸条約の原則及び精神に従って取り扱われる。

第九条 国際連合要員及び関連要員に対する犯罪

1 締約国は、自国の国内法により、故意に行う次の行為を犯罪とする。

(a) 国際連合要員又は関連要員を殺し又は誘拐すること及びこれらの要員の身体又は自由に対するその他の侵害行為

(b) 国際連合要員又は関連要員の公的施設、個人的施設又は輸送手段に対する暴力的侵害行為であ って、これらの要員の身体又は自由を害するおそれのあるもの

(c) これらの行為を行うとの脅迫であって、何らかの行為を行うこと又は行わないことを自然人又は法人に対して強要することを目的とするもの

(d) これらの行為の未遂

(e) これらの行為若しくはその未遂に加担すること又はこれらの行為を行わせるために他の者を組織し若しくは他の者に命ずること。

2 締約国は、1に定める犯罪について、その重大性を考慮した適当な刑罰を科することができるようにする。

第一〇条 裁判権の設定

1 締約国は、次の場合において前条に定める犯罪についての自国の裁判権を設定するため、必要な措置をとる。

(a) 犯罪が自国の領域内で又は自国において登録された船舶若しくは航空機内で行われる場合

(b) 容疑者が自国の国民である場合

2 締約国は、次の場合において前条に定める犯罪についての自国の裁判権を設定することができる。

(a) 犯罪が自国内に常居所を有する無国籍者によって行われる場合

(b) 犯罪が自国の国民に関して行われる場合

(c) 犯罪が、何らかの行為を行うこと又は行わないことを自国に対して強要する目的で行われる場合

3 2に定める裁判権を設定した締約国は、その旨を国際連合事務総長に通報する。当該締約国は、その後に当該裁判権 を廃止した場合には、その旨を国際連合事務総長に通報する。

4 締約国は、容疑者が自国の領域内に所在し、かつ、自国が1又は2の規定に従って裁判権 を設定したいずれの締約国に対しても第十五条の規定による当該容疑者の引渡しを行わない場合において前条に定める犯罪についての自国の裁判権 を設定するため、必要な措置をとる。

5 この条約は、国内法に従って行使される刑事裁判権を排除するものではない。

第一一条 国際連合要員及び関連要員に対する犯罪の防止

  締約国は、特に次の方法により、第九条に定める犯罪の防止について協力する。

(a) 自国の領域内又は領域外で行われる犯罪の自国の領域内における準備を防止するためあ らゆる実行可能な措置をとること。

(b) 犯罪を防止するため、適当な場合には、自国の国内法に従って情報を交換し、及び行政上の措置その他の措置を調整すること。

第一二条 情報の伝達

1 第九条に定める犯罪が自国の領域内で行われた締約国は、容疑者が自国の領域から逃亡したと信ずるに足りる理由があ る場合には、自国の国内法に定めるところにより、当該犯罪に関するすべての関連事実及び当該容疑者の特定に関するすべての入手可能な情報を、国際連合事務総長に通報し、及び直接又は同事務総長を通じて関係国に通報する。

2 第九条に定める犯罪が行われた場合には、その被害者及び当該犯罪の状況に関する情報を有する締約国は、国際連合事務総長及び関係国に対し、自国の国内法に定めるところにより、十分かつ速やかに当該情報を伝達するよう努める。

第一三条 訴追又は引渡しを確保するための措置

1 容疑者が領域内に所在する締約国は、状況により正当である場合には、訴追又は引渡しのために当該容疑者の所在を確実にするため、自国の国内法により適当な措置をとる。

2 1の規定に基づいてとられる措置は、国内法に従って、かつ、遅滞なく、国際連合事務総長に通報し、及び直接又は同事務総長を通じて次の国に通報する。

(a) 犯罪が行われた国

(b) 容疑者の国籍国又は容疑者が無国籍者である場合には当該容疑者が領域内に常居所を有する国

(c) 被害者の国籍国

(d) その他の関係国

第一四条 容疑者の訴追

  容疑者が領域内に所在する締約国は、当該容疑者を引き渡さない場合には、いかなる例外もなしに、かつ、不当に遅滞することなく、自国の法令による手続を通じて訴追のため自国の権 限のある当局に事件を付託する。その当局は、自国の法令に規定する通常の重大な犯罪の場合と同様の方法で決定を行う。

第一五条 容疑者の引渡し

1 第九条に定める犯罪は、締約国間の現行の犯罪人引渡条約における引渡犯罪でない場合には、当該条約における引渡犯罪とみなされる。締約国は、相互間で締結されるすべての犯罪人引渡条約に同条に定める犯罪を引渡犯罪として含めることを約束する。

2 条約の存在を犯罪人引渡しの条件とする締約国は、自国との間に犯罪人引渡条約を締結していない他の締約国から犯罪人引渡しの請求を受けた場合には、随意にこの条約を第九条に定める犯罪に関する犯罪人引渡しのための法的根拠とみなすことができる。この犯罪人引渡しは、請求を受けた国の法令に定めるところによる。

3 条約の存在を犯罪人引渡しの条件としない締約国は、犯罪人引渡しの請求を受けた国の法令に定めるところにより、相互間で、第九条に定める犯罪を引渡犯罪と認める。

4 第九条に定める犯罪は、締約国問間犯罪人引渡しに閲しては、当該犯罪が発生した場所のみでなく、第十条の1又は2の規定に従って裁判権 を設定した締約国の領域内においても行われたものとみなされる。

第一六条 刑事問題に関する相互援助

1 締約国は、第九条に定める犯罪についてとられる刑事訴訟手続に関し、相互に最大限の援助(自国が提供することができる証拠であ って当該訴訟手統に必要なものの収集に係る援助を含む。)を与える。この場合には、援助を要請された国の法令が適用される。

2 1の規定は、他の条約に規定する相互援助に関する義務に影響を及ぼすものではない。

第一七条 公正な取扱い

1 いずれの者も、自己につき第九条に定める犯罪のいずれかに関して捜査が行われ又は訴訟手続がとられている場合には、そのすべての段階において公正な取扱い、公正な裁判及び自己の権 利の十分な保護を保障される。

2 いずれの容疑者も、次の権利を有する。

 (a) 当該容疑者の国籍国その他当該容疑者の権利を保護する資格を有する国又は当該容疑者が無国籍者であ る場合には当該容疑者の要請に応じてその権利を保護する意思を有する国の最寄りの適当な代表と遅滞なく連絡を取る権 利

 (a) に規定する国の代表の訪問を受ける権利

第一八条 訴訟手続の結果の通報

  容疑者を訴追した締約国は、訴訟手続の確定的な結果を国際連合事務総長に通報する。同事務総長は、当該情報を他の締約国に伝達する。

第一九条 周知

  締約国は、できる限り広い範囲において、この条約の周知を図ろること並びに、特に、自国の軍隊の教育の課目にこの条約及び国際人道法の関係規定についての学習を取り入れることを約束する。

第二〇条 保留条項

  この条約のいかなる規定も、次の事項に影響を及ぼすものではない。

(a) 国際連合活動並びに国際連合要員及び関連要員の保護について国際文書に定められている国際人道法及び普遍的に認められている人権 に関する基準が適用されること、並びにこれらの要員がこれらの法及び基準を尊重する責任

(b) 自国の領域に人が入ることについての同意に関する締約国の権利及び義務であ って国際連合憲章に合致するもの。

(c) 国際連合要員及び関連要員が国際連合活動の任務に関する規定に従って行動する義務

(d) 国際連合活動に自発的に要員を派遣する国が当該活動から自国の要員を撤退させる権 利

(e) 各国によって国際連合活動に自発的に派遣される者の平和維持のための役務による死亡、廃疾、負傷又は疾病に関して支払われるべき適当な補償を受ける権 利

第二一条 自衛のための権利

  この条約のいかなる規定も、自衛のための行動をとる権利に影響を及ぼすものと解してはならない。

第二二条 紛争解決

1 この条約の解釈又は適用に関する締約国間の紛争で交渉によって解決されないものは、いずれかの紛争当事国の要請により、仲裁に付される。仲裁の要請の日から六箇月以内に仲裁の組織について紛争当事国が合意に達しない場合には、いずれの紛争当事国も、国際司法裁判所規程に従って国際司法裁判所に紛争を付託することができる。

2 締約国は、この条約の署名、批准、受諾若しくは承認又はこの条約への加入の際に、1の全部又は一部の規定に拘束されない旨を宣言することができる。他の締約国は、そのような留保を付した締約国との関係において1の全部又はその関係部分の規定に拘束されない。

3 2の規定に蕃づいて留保を付した締約国は、国際連合事務総長に対する通告により、いつでもその留保を撤回することができる。

第二三条 検討会合

  一又は二以上の締約国からの要請がある場合において、締約国の過半数によって承認されるときは、国際連合事務総長は、この条約の実施について及びこの条約の適用に関して生ずる問題について検討するため、締約国の会合を招集する。

第二四条 署名

  この条約は、千九百九十五年十二月三十一日まで、ニューヨークにある国際連合本部において、すべての国による署名のために開放しておく。

第二五条 批准、受諾又は承認

  この条約は、批准され、受諾され又は承認されなければならない。批准書、受諾書又は承認書は、国際連合事務総長に寄託する。

第二六条 加入

  この条約は、すべての国による加入のために開放しておく。加入書は、国際連合事務総長に寄託する。

第二七条 効力発生

1 この条約は、二十二の批准書、受諾書、承認書又は加入書が国際連合事務総長に寄託された後三十日で効力を生ずる。

2 二十二番目の批准書、受諾書、承認書又は加入書が寄託された後にこの条約を批准し、受諾し若しくは承認し又はこれに加入する国については、この条約は、その批准書、受諾書、承認書又は加入書の寄託の後三十日目の日に効力を生ずる。

第二八条 廃棄

1 締約国は、国際連合事務総長に対して書面による通告を行うことにより、この条約を廃棄することができる。

2 廃棄は、国際連合事務総長が1の通告を受領した日の後一年で効力を生ずる。

第二九条 正文

  アラビア語、中国語、英語、フランス語、ロシア語及びスペイン語をひとしく正文とするこの条約の原本は、国際連合事務総長に寄托する。同事務総長は、その認証謄本をすべての国に送付する。

千九百九十四年十二月九日にニューヨークで作成した。

出典 http://homepage1.nifty.com/arai_kyo/intlaw/docs/csunap.htm


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